睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠中に無呼吸や低呼吸の状態になり、睡眠が妨げられる症状です。睡眠中に10秒以上、もしくは1時間に5回以上呼吸が⽌まるとSASと診断されます。
分類と原因
Ⅰ閉塞性
睡眠中の筋弛緩による、⾆根部がさがり物理的に気道を閉塞することで無呼吸症状が現れます。
原因
- 肥満の⼈
- ⾸が太い
- ⾸が短い
- 下アゴが⼩さい、⼩顔
- 下あごが後⽅にある
- 扁桃肥⼤
- ⾆肥⼤
- ⿐閉(⿐炎や⿐中隔湾曲症)
Ⅱ中枢性
脳の中で特に呼吸中枢のある脳幹機能の異常により発症します。
原因
- 脳疾患(脳幹梗塞・脳炎・アーノルド-キアリ奇形)
- ⼼不全
- 甲状腺機能低下症
- ⾼地滞在
- 薬剤性
- 先天性(先天性中枢性肺胞低換気症候群)
Ⅲ混合性
中枢性の無呼吸の後に閉塞性の無呼吸が現れるものです。
主な症状
寝てる時の症状
- いびき
- 頻尿
- 何度も⽬が覚める
- 呼吸が⽌まる
- むせる
起きた時
- 熟睡感がない
- 頭痛がする
- 体が重い
- 眠くて起きられない
起きてるとき
- ⽇中に激し眠気に襲われる
- だるい
- 集中⼒がない
- 疲労感がある
合併症のリスク
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、⽣命にかかわる合併症を起こしやすいので早期の治療が必要です。
合併する病名 | 健常者と比べての倍率 |
---|---|
高血圧 | 約2倍 |
慢性心不全 | |
狭心症・心筋梗塞 | 2~3倍 |
糖尿病 | |
不整脈 | 2~4倍 |
脳卒中 | 約4倍 |
検査について
携帯⽤睡眠時無呼吸検査装置(SAS検査)
当院では、入院の必要ない携帯型の終夜睡眠ポリグラフィー検査を行っております。
使用機器の操作も簡単で、どなたでも安心してお使い頂けます。
検査当日、機器の使用法を説明し、就寝時に装着していただき、3日間計測後に返却いただきます。
終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)
携帯用で診断がつかない場合に行います。
1日入院して睡眠の状態や呼吸状態、動脈欠酸素飽和度、体位、脳波などで総合的に判定します。
睡眠時無呼吸症候群以外に周期性四肢運動障害やレム睡眠行動障害などの診断にも使用されます。
重症度分類
睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index):無呼吸低呼吸指数と表し、この指数により重症度が決定します。
軽症 | 5≦AHI<15 |
---|---|
中等症 | 15≦AHI<30 |
重症 | 30≦AHI |
治療について
経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対し有効な治療の一つで、もっとも一般的に行われています。
この治療法は、気道閉塞に対して行う対症療法で、鼻マスクを利用して空気を送り込み、圧力をかけ気道を閉じないようにするものです。
睡眠時無呼吸症候群を改善するだけでなく高血圧・心筋梗塞・脳卒中などの合併症を予防することができます。
【保険適用条件】
- 月に一度の受診
- PSG検査でAHI20以上
- 携帯型SAS検査でAHI40以上でSAS症状が明らかな場合
サーボ制御圧感知型人工呼吸器(ASV)
CPAPは一定の空気の圧力をかけ続けるのに対してASVは呼気と吸気で違う圧力がかかるように設定されております。
心不全患者などは、吸気の圧力により、つぶれている肺胞の拡張や肺に溜まった水分が減りガス交換率が上昇します。
【保険適用条件】
- 月に一度の受診
- 慢性心不全患者のうち、NYHAⅢ度以上である
- 睡眠時にチェーンストークス呼吸がみられる
- 無呼吸低呼吸指数が20以上であることが睡眠ポリグラフィー上確認されている
- CPAP療法を実施したにも関わらず無呼吸低呼吸指数が15以下にならない者
手術
- 閉塞してる原因である扁桃炎やアデノイドを切除する方法
- 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術
ダイヤモックス内服治療
- ダイヤモックス1日250~500を分割投与する。
- 効能は高山病参照
マウスピース
- 下顎が前に出るようにマウスピースを作製します。6割程度のAHIの減少が期待されます。
生活習慣の改善
- 肥満の改善
- 鼻閉やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎の治療
- 寝酒は控える
- 睡眠薬を使用しない
- 仰向けで寝ない
- 横向きに寝る(抱き枕を使うとより効果的)
- 枕の高さを調節する(仰向けで寝る場合で肩口から頭の傾斜が10~15度に調整)